
今回ご紹介する安田道代(現在の大楠道代)主演の“秘録おんな”シリーズは、簡単に言えば女囚ものだ。ヨーロッパのエログロB級映画でよく見かける、無実の罪などで刑務所に入ったヒロインが拷問やレイプ、リンチなど様々な責め苦を味わう映画の日本版、いや時代劇版と言える。当然ながら売りは、女性の裸と、大映末期を支えた美人女優・安田道代が責め苦に耐えるシーン。このシリーズは、1968年の第1作「秘録おんな牢」から計5作品が作られているが、そのうちの最初の4本をお届けしたい。
まず、第1作「秘録おんな牢」(68年)は、典型的な女囚もので、無実の罪を着せられ牢に入れられたヒロインが、閉ざされた女の園でリンチや拷問、レズ行為など恐怖と屈辱の体験を強いられる。とはいえ、エログロは強烈ではなく、極限状態の人間心理を丁寧に描いた好編。後半の復讐劇が姉妹愛へと一転するどんでん返しが、いかにも大映映画らしい。 第2作「秘録おんな蔵」(68年)は、今度は牢屋ではなく、決して逃げ出せない吉原という遊女の町を刑務所になぞらえた作品。親の借金のかたに売られてきたヒロインの復讐劇という点で、前作をきちんと踏襲している。安田の相手役は田村正和。美味しいところをさらっていくので、ファンは必見だ。 第3作「続・秘録おんな牢」(68年)で、安田は再び女囚役に戻るが、1作目と比べると責め苦の過激さは倍増。鍵役(看守)による拷問はエスカレートして、レイプ・シーンまである。その代わり、女囚たちの友情が新たにドラマを彩り、クライマックスの見せ場へと昇華してゆく。 最後の第4作「秘録おんな寺」(69年)も、尼寺を舞台にした女囚もののバリエーション。安田は、シャバで罪を犯して出家したという設定のため、寺から逃げ出せないのだが、そのことが同時に、実は…とオチを際立たせる効果も生んでいる。尼寺の関係者が見たら激怒しそうな内容で、坊主頭の尼さんたちの露わな姿が艶めかしく、病みつきになりそう!
安田道代についても簡単に触れておきたい。1946年生まれなので、現在63歳。洋服のブランド“ビギ”の社長夫人としても知られ、新作は来年早々に公開予定の太宰治原作「人間失格」だ。 短大時代の64年にスカウトされ、吉永小百合主演の日活映画「風と樹と空と」でデビューした彼女の女優人生は、順風満帆にスタートした。すぐに勝新太郎に見込まれ、大映の全面的なバックアップを受けて活躍。本シリーズや“関東おんな”シリーズへの主演のほか、「悪名」「兵隊やくざ」シリーズでは勝の相手役を務め、大女優への道が開けたかに見えた矢先、大映が倒産してしまう。 76年に結婚。大楠道代と名を改めてからしばらく女優活動は控えめだったが、80年に鈴木清順監督にとっても復帰作となった「ツィゴイネルワイゼン」の演技が絶賛され、それ以降は大女優として現在まで不動の地位を築いている。 “秘録おんな”シリーズは、安田が女優として最も輝いていた時期に量産されたプログラムピクチャーだ。それだけに、美貌も演技力も主役オーラも申し分ない。その上、大映京都撮影所の伝統が息づき、監督も森一生、安田公義らが担っている。エログロB級映画と侮るなかれ、職人技が冴える高い完成度の時代劇でもあるのだ。 この秋は、「BALLAD 名もなき恋のうた」「TAJOMARU」「カムイ外伝」など異色の時代劇が劇場を賑わしているが、こちらも異色度では負けていない。ぜひ見比べてほしいし、裁判員制度がスタートして、死刑制度や冤罪問題などがかまびすしく議論されている今の時代にピッタリの、社会性までも兼ね備えたシリーズなのだ。
文・外山真也
2009.9.18更新
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