
類まれな美しさと妖しいフェロモンで男たちを惑わし、守ってあげたくなる少女性によって独占欲をかきたてる魔性のヒロイン・富江。しかも独占欲が高じて殺意となり、富江は早々に殺されることになるのだが、殺されても死なずに何度も生き返る。そればかりか、バラバラに切り刻まれようが、焼かれて灰になろうが、細胞や血の一滴から何度も蘇生し、変わらぬ高慢な微笑みをたたえて我々の前に姿を現すのである。
ホラー映画「富江」シリーズの魅力は、漫画家・伊藤潤二が生んだ、この斬新なキャラクター造形にある。
シリーズは現時点で7作品が作られているが、今回は第1作「富江 tomie」から第4作「富江 最終章~禁断の果実~」までの最初の4本をお届けしたい。
菅野美穂、宝生舞、酒井美紀、安藤希という、その時々の旬のアイドル女優たちが富江を演じているのも、本シリーズの見どころだ。さらに、富江の謎を追う(あるいは翻弄される)役回りの女優たちも、中村麻美、山口紗弥加、遠藤久美子、宮﨑あおいと演技力も兼ね備えた豪華な布陣。
富江のキャラクターも、徹底して謎めいた菅野美穂、クールで陰のある宝生舞、とらえどころのない酒井美紀、両性具有的な安藤希と、作品ごとに異なるカラーを持つ。監督も四者四様。それぞれの監督が富江というフィルターを通して見ている理想の女性像、あるいは恐怖像と言えそう。はたまた、演じる女優たちの個性(女優としての資質)が投影された富江像と見ることもできるだろう。
記念すべきシリーズ第1作「富江 tomie」(99年)は、シリーズ誕生作にふさわしい富江誕生秘話になっている。もちろんホラー映画ではあるが、全体のトーンは青春群像劇で、ショッカー演出が苦手な人でも大丈夫。菅野美穂も、顔を見せずに恐怖をあおる演出手法をとっているため出ずっぱりでないのが残念だが、シリーズ一番のハマり役だろう。特にゴキブリを素手でつかむ場面の女優根性には脱帽だ。監督は5作目、6作目でもメガホンを取っている及川中。
第2作「富江 replay」(00年)は、一転、病院が舞台であることや宝生舞のバタ臭い顔立ちも貢献して、ゴシック・ホラーの雰囲気が漂う作品に。スタイリッシュな映像とミステリー要素満点の物語でグイグイ引っ張る。監督は光石冨士朗。
続く第3作「富江 re-birth」(01年)の監督は、「呪怨」シリーズで大ブレイクした直後の清水崇。原作の持つブラックな笑いの要素が初めて注入され、ホラーとコメディが紙一重であるというホラー映画の本質を踏まえた、面目躍如の腕前にうならされる。その意味で酒井美紀の富江は、怖いゆえに滑稽で、その滑稽さが背筋を凍らせるという、最も原作に忠実なキャラクターになっているように思える。
また、それまでも描かれていたが、自身の細胞を寄生させることで他人の肉体を乗っ取る、つまり“ボディスナッチャー”の恐怖が、初めて物語の中心に据えられている点にも注目したい。富江のチャームポイントである左目の泣きぼくろが、彼女が寄生していることを示す目印になっているという設定も秀逸だ。
そして、第4作「富江 最終章~禁断の果実~」(02年)の監督は、どんな女優もエロく描ける「櫻の園」の中原俊。副題からも察せられる通り、“ロリータ”と“レズビアン”の要素を本シリーズに持ち込んだ、全くのオリジナル・ストーリーだ。安藤希と宮﨑あおいが戯れる萌え萌えのシーンがたまらない!
富江というキャラクターは、確かに不気味で怖い。だが、本シリーズの本当の怖さは、彼女の存在によって周囲の男や彼女に嫉妬する女たちからあぶり出される、人間の醜さや欲望にこそあるのだ。
文・外山真也
2009.7.24更新
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