
“昇り竜のお銀”こと大滝銀子が活躍する「女賭博師」シリーズ。1966年から71年に全17本が作られた。江波杏子にとっても、お銀は一躍スターダムに押し上げてくれた当たり役だ。「入ります!」の決めゼリフは流行語にまでなった。最初期の4作品を紹介した特集が好評を博したので、ご要望に応えて、今回はいよいよシリーズが本格化する第6作「女賭博師乗り込む」から第9作「女賭博師絶縁状」までの4作品をお届けしよう。
本格化するとは、どういうことか? 「水戸黄門」の印籠のように同じシーンが次作へと踏襲され、パターン化すること。本シリーズの場合なら、お銀が三白眼でカメラを睨みつけて言う「入ります!」の決めゼリフであり、ふくよかな乳房にさらしをギュッと巻いてゆくお色気シーンである。ファンはそんなお決まりのシーンが見たくて、映画館に足を運ぶわけだ。当時の「待ってました!」のかけ声が聞こえてくるよう!
まず「女賭博師乗り込む」(68年)は、決めゼリフのパターンが確立した記念すべき作品だ。名人と言われた銀子が、恩義のため一度は足を洗ったツボ振りに返り咲く話で、銀子が深川芸者の娘という設定が妙味となっている。亡き母の跡を継いで、芸者として舞台にも立つのだから。安田道代(現在の大楠道代)扮する現代っ子の妹が好対照で、銀子の気品やしとやかな色気を際立たせる。
「女賭博師鉄火場破り」(68年)では、銀子は腕は立つがまだ駆け出しという設定。マネジャーを兼ねた女師匠との紆余曲折が描かれる。博打のメインは花札だが、もちろん決めゼリフもちゃんと登場する。「女賭博師尼寺開帳」(68年)では、銀子が尼寺を舞台に父親が作ったイカサマ賽に挑む。この頃になると、江波のツボ振りの技量にも磨きがかかり、カッコイイことこの上ない。
そして、第9作「女賭博師絶縁状」(68年)。今回紹介する4本ではこれがイチオシで、シリーズ中でも隠れた名作の一本だろう。何と言っても、名人に敗れた銀子が異端の勝負師に弟子入りして精神面の弱さを克服するという、一種の“スポ根”テーストが見どころ。銀子の弟の恋や師匠の父娘の愛憎といったサブストーリーが、本筋に絶妙に絡む脚本も秀逸だ。プログラム・ピクチャーのお手本のような、田中重雄監督の無駄のない演出も冴えている。
本シリーズは、常に昇り竜のお銀が主人公とはいえ、完全な1話完結。銀子の設定も毎回クルクル変わる。お陰で、シリーズのどこから見ても楽しめるし、順番を気にする必要がない。お銀も江波杏子も知らない若い映画ファンが見ても、ハンデでは全くないのだ。
それにしても、若き日の江波杏子は美しい。彼女の日本人離れした美貌は、当時よりも現代の方がウケるのではないだろうか。蛇顔が怖いだの、鼻の穴がデカイだのといった否定的な意見を時々耳にするが、それもむしろ彼女のチャームポイント。栗山千明の鼻が普通の高さだったら?と想像してみれば分かるはずだ。綾瀬はるかのアゴも然り。ハリウッドに目を向ければ、ジュリア・ロバーツの大口だってそうだろう。絶世の美しさというものは、容姿の均衡を微妙に崩すプラスアルファが奇跡的に生み出すものなのだ。
文・外山真也
2009.5.29更新
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