
1966年から71年にかけて全17本が製作された“女賭博師”シリーズ。それまで悪女や情婦などクセのある脇役を演じていた江波杏子が、ここからブレイクした。第1作「女の賭場」は、彼女にとっては何と58本目にして初めての主演映画。しかも、事故で降板した若尾文子の代役だった。幸運が重なったとはいえ、なかなか芽が出なかった女優を一躍スターダムに押し上げるほど、女賭博師という役柄がハマっていた証しだろう。
ただし、富司純子の“緋牡丹お竜”と並び、「入ります!」の名セリフで任侠映画ファンにおなじみの女ツボ振り師“昇り竜のお銀”がお目見えするのは、シリーズ6作目「女賭博師乗り込む」から。今回、お届けする最初期の4作品で江波は、シリーズが本格化する以前、つまり試行錯誤の時期ならではのバリエーションに富んだ女賭博師を演じている。
これらのヒットなくしては、のちの“昇り竜のお銀”の大活躍もなかったはずで、その意味でも貴重なビギニング作品群である。
江波杏子の魅力を一言でいえば、“クールビューティー”だろう。エキゾチックな顔立ちと、日本人離れしたバツグンのプロポーション。ちょっとソフィア・ローレンを思わせる。今年、芸能生活50周年を迎えるそうだ。本シリーズの終了後は、73年の「津軽じょんがら節」で演技派女優へと転身を遂げており、若い人には「ごくせん」の赤城理事長と言った方が分かりやすい存在となった。けれども若かりし日の彼女は、純粋な日本人なのか疑いたくなるほど妖艶で、圧倒的に美しい。まさに元祖クールビューティーである。
第1作「女の賭場」(66年)は、名人と言われる花札の胴師(*)を父に持つヒロインのアキが、策略にあって自殺した父の仇を討つ復讐もの。監督は、6作品でメガフォンをとっているシリーズの生みの親・田中重雄で、簡潔明瞭な描写と適度なケレンにより良質のプログラム・ピクチャーに仕上げている。
第2作「女賭博師」(67年)の夏江も花札の胴師。ヤクザの世界と堅気の世界の狭間で悩むヒロイン像は踏襲されているものの、胴師としての活躍がクライマックスだけだった前作と比べると、見せ場は格段に増えている。
第3作「女賭場荒し」(67年)で、いよいよ江波のツボ振りが見られる。しかも役名も大滝銀子で“昇り竜のお銀”を名乗るが、お銀のキャラクターがシリーズならではのセオリー(例えば「水戸黄門」の印籠のような)を獲得するには、第6作を待たねばならなかった。それでも、お銀が初登場した記念すべき作品として、一世を風靡した人気女傑の誕生に立ち会える貴重な機会だ。
第4作「三匹の女賭博師」(67年)で、再び花札がメインの博打に戻る。主役はあくまでも江波だが、タイトル通り3人の女胴師が活躍。その1人が、直後に“関東おんな”シリーズや“秘録時代劇”シリーズの主演を任される、当時売り出し中の安田道代(現在の大楠道代)だ。シリーズが本格化する前夜、本作からもう1人の主演女優が巣立っているのだ。
のちの任侠映画ブームに多大な影響を与えた“女賭博師”シリーズ。まずは、シリーズ黎明期に当たるこの4作品を、江波杏子の類まれな美貌とともに、ご堪能あれ!
(*)胴師 = 賭博で盆(場)を仕切る人
文・外山真也
2009.5.1更新
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