
ゴジラと並んで、日本が誇る怪獣の代名詞“ガメラ”。
大映が東宝の「ゴジラ」シリーズに対抗して、65年に第1作を発表。倒産する71年までに7作品が撮られた。80年には、生みの親である湯浅憲明の手で総集編的な色合いの「宇宙怪獣ガメラ」も作られている。“子供の味方”という新機軸と、亀型の怪獣が回転しながら空を飛ぶアイデア、大映独自の特撮技術によって人気を博した。
だが、それだけだったら、ゴジラと比肩するほどの怪獣映画とはみなされていないはず。徳間グループに入って再建を果たした大映により95年に復活した“平成3部作”が、「ガメラ」シリーズに不動の評価をもたらしたのだ。
平成ガメラ3部作は、シリーズを通して監督を金子修介、特技監督を樋口真嗣、脚本を伊藤和典が担っている。中でも樋口は、本シリーズの成功で知名度を上げ監督業に進出。「ローレライ」「日本沈没」などを大ヒットさせている。
今回お届けするのは、この平成3部作と、65年製作の記念すべきシリーズ第1作「大怪獣ガメラ」の4作品だ。
平成シリーズ第1作「ガメラ 大怪獣空中決戦」(95年)は、SF要素を盛り込んだリアル志向の怪獣映画として絶賛され、怪獣映画では初めて「キネマ旬報」誌の年間ベストテン入りを果たしている。ここでガメラが戦う相手はギャオスだ。昭和シリーズで人気だった翼竜タイプの敵対怪獣だが、ガメラともども設定は一新されており、超古代文明が遺伝子操作によって生み出した兵器。対するガメラも、ギャオスに対抗して作られた正義の怪獣だが、“人類”ではなく“地球”の危機を察知して行動する。人間の目線から見上げるアングルを多用して怪獣の巨大さを表現した演出や、ギャオスが東京タワーに営巣する夕景など、旧シリーズへのオマージュを盛り込みつつも誰も観たことのない全く新しい“メタ怪獣映画”として、日本映画史に輝く傑作となった。
第2作「ガメラ2 レギオン襲来」(96年)は、“究極の怪獣映画”だった1作目とはジャンルを変え、自衛隊の全面協力の下に作り上げた“戦争映画”。日本SF大賞を映画としては初めて受賞している。基本構造は宇宙怪獣レギオンvs.自衛隊であり、怪獣映画では類がないほど人間の活躍が目覚ましい。特撮と人間のシーンのコンビネーションも抜群で、手負いのガメラが飛び去る様子を「あ、ガメラの血」とつぶやく水野美紀の表情で描く演出は、何度観ても鳥肌が立つ。金子監督一流の斬新な省略表現も冴えわたる。
1作目で怪獣映画、2作目で戦争映画を追求した作り手の野心は、第3作「ガメラ3 邪神<イリス>覚醒」(99年)では、“パニック映画”へと向かう。世界中にギャオスが大量発生し、迎え撃つガメラの行動が、大勢の一般市民を巻き添えにする。本作の主人公は、怪獣同士の戦いによって両親を失い、ガメラを恨む少女である。また、JR京都駅ビルを使った怪獣映画史上初ともいえる屋内での大怪獣バトルや、日本のVFX史に残るイリス(ギャオスの変異体)との空中戦など革新的な試みも多い。
ここには、富野由悠季の影響が垣間見える。彼は「機動戦士ガンダム」の生みの親で、ロボットアニメという子供向けの分野に高度なSF設定を持ち込み、“勧善懲悪”という固定観念に一石を投じたアニメ界の革命児。実際に富野が演出した「無敵超人ザンボット3」では、巨大ロボット同士の戦いに巻き込まれて人が死んだりする。平成ガメラ3部作は、これを怪獣映画で試みているわけだ。自他ともに認める富野フリークの樋口真嗣、押井守(「イノセント」などのアニメ監督)の盟友にしてサンライズ(ガンダムの製作会社)で働いたこともある伊藤和典、そして押井の大学の後輩でアニメの演出経験もある金子修介。この3人がスタッフの中心を担う平成ガメラのSF的な世界観は、ファースト・ガンダム世代によって創出されたものなのだ。
そんな怪獣映画の革命に満ちた平成3部作を楽しむためにも、ガメラがスクリーンに初登場した「大怪獣ガメラ」(65年)を、併せて押さえておきたい。
文・外山真也
2009.3.27更新
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