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円月殺法が冷たく冴える! 虚無の剣豪を演じた市川雷蔵の代表作 眠狂四郎シリーズ

これまでに幾度となく映像化されてきた眠狂四郎シリーズ。鶴田浩二、市川雷蔵、田村正和、片岡孝夫(現・片岡仁左衛門)といった二枚目スターたちが狂四郎を演じているが、白眉は市川雷蔵版だろう。
必殺の“円月殺法”で情け容赦なく敵を斬り、女を犯す狂四郎。転びバテレン(キリスト教を捨て転向した宣教師)の血を引く美貌と暗い宿命がまとわせるニヒリズムにより、一世を風靡した孤高のヒーロー像を、雷蔵ならではの端正な魅力で見事に体現した。雷蔵の晩年の代表シリーズだ。

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(C)角川映画

晩年と言っても、37歳の若さで肝臓癌のために亡くなっているので、シリーズが始まったのは32歳の時。夭折の美男スターは、ジェームス・ディーンやジェラール・フィリップの例を挙げるまでもなく、死後になって伝説化されるものだが、雷蔵もその例に漏れず、今もなお神話的なオーラを放っている。しかも彼の場合は、15年程の映画人生で158本もの作品に出演しており、まさに円月殺法を地でいくような無双の存在と言える。
だが、たとえどんな名優が演じたとしても、シリーズというのはマンネリ化をまぬがれないもの。007は定期的に主役をすげ替えることでシリーズを維持しているわけだし、実際、第1作「ドクター・ノオ」(「007は殺しの番号」より改題)公開の翌年に、その影響下でスタートしており、毎回替わるボンドガールならぬ狂四郎ガールや敵キャラ、必ず登場するお色気シーン、円月殺法の残像処理など、パターン化された表現も多い。
にもかかわらず、雷蔵が他界して最後となった12作目まで水準が落ちることはなかった。そればかりか、原作者の柴田連三郎をして、こんなことを言わしめている。
「今日まで、数多くの俳優が、狂四郎を演じたが、市川雷蔵が、ガンに冒された晩年の狂四郎に、凄味があったのを、眼裏にとどめている。」(読売新聞1976年6月12日より)
無双の美男スターが死を賭して演じ切った虚無の剣豪は、今も我々の眼裏に残像をとどめ続けているのである。

 
(C)角川映画

では今回は、シリーズの最初の4作品「眠狂四郎 殺法帖」「~勝負」「~円月斬り」「~女妖剣」をお届けしよう。  雷蔵版狂四郎の初登場となった「殺法帖」(63年)は、共演作の多い中村玉緒をヒロインに、加賀藩の政争に巻き込まれた狂四郎の活躍を描く。第2作「勝負」(64年)は、同じく三隅研次が監督した第5作「炎情剣」と並ぶシリーズ屈指の出来栄えで、方向性を決定づけた傑作。幕政改革に燃える老勘定奉行を陰ながら護衛する狂四郎の円月殺法が冴える。加藤嘉扮する勘定奉行をはじめ脇に至るまで魅力的なキャラクターを配し、殺陣シーンも充実。非情なラストも余韻を残す。第3作「円月斬り」(64年)では、世継ぎの座を狙う、将軍・家斉の不肖の隠し子の野望を狂四郎が阻む。そして、自身の出生の秘密を追って浜松へと向かう第4作「女妖剣」(64年)も相当な佳作。妖艶な女優陣や豊富な殺陣シーン、これ以降定番となる光学処理による円月殺法の残像効果も初お目見えし、見どころ満載だ。

文・外山真也

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2009.3.19更新

 

 

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