
日本で最も有名な文学賞と言えば、芥川賞と直木賞だろう。どちらも権威ある新人賞で、文壇におけるその年のベスト1を選ぶ類のものではないが、一度受賞するや、マスコミの寵児となってもてはやされ、売上も倍増する。
きっかけとしては1950年代後半に石原慎太郎や大江健三郎らの受賞が社会現象にまで広がった歴史が挙げられるが、実際、受賞した作家には現代の文壇を支えるそうそうたる顔ぶれが並び、映像化されている作品も多い。代表的な作家を挙げるならば、芥川賞の宮本輝、村上龍、小川洋子、直木賞では渡辺淳一、浅田次郎、宮部みゆきに東野圭吾あたりが、映画化の多い筆頭だろうか。
今週は、そんな両賞受賞作家の小説で映画化されたものを、最近の映画から4本ピックアップしてみた。
まずは、現在「ララピポ」が成宮寛貴主演で公開中の奥田英朗から。彼が初めて直木賞候補になった同名小説の映画化「イン・ザ・プール」(04年)は、04年上半期の直木賞受賞作「空中ブランコ」と同じ“精神科医・伊良部一郎”を主人公にしたシリーズで、大人計画の松尾スズキが怪演している。劇中に登場する患者同様に観客である我々も、とんでも医師・伊良部のとても治療とは思えない治療法が病みつきになり、癒されること請け合いだ。監督はテレビ「時効警察」のハジけた演出で知られ、新作「インスタント沼」も5月に公開される異才・三木聡。
直木賞からもう1人。「後巷説百物語」で同賞を受賞し、百鬼夜行シリーズでおなじみの人気作家・京極夏彦だ。「四谷怪談」に基づく彼の同名小説を、演劇界の巨匠・蜷川幸雄が映画化したのが「嗤う伊右衛門」(03年)。蜷川らしいスタイリッシュな演出で、男と女の愛と狂気が描かれる。
蜷川と言えば、昨年、金原ひとみの芥川賞受賞小説「蛇にピアス」を映画化して話題となったが、03年下半期に史上最年少の19歳11ヶ月で金原と同時受賞した綿矢りさのデビュー作を映画化したのが「インストール」(04年)だ。インターネットの“エロ”チャットにハマる女子高生と小学生を演じる上戸彩と神木隆之介の際どい会話は必聴もの!
最後も芥川賞から、「ゲルマニウムの夜」で受賞した花村萬月原作の「イグナシオ 純粋的衝動殺人者」(96年)を取り上げたい。花村も「ゲルマニウム~」「皆月」など映画化の多い作家だが、暴力と性によって人間の業を暴く作風は一貫している。
2008年度の下半期は、2009年1月に芥川賞に津村記久子の「ポトスライムの舟」が、直木賞に天童荒太の「悼む人」と山本兼一の「利休にたずねよ」が選ばれたが、彼らの作品も近い将来、映画化されるのは間違いない。
文・外山真也
2009.2.20更新
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