
今週は、“角川3人娘”の一人、渡辺典子を特集しよう。映画×TVドラマ「赤い糸」に母親役で出演している彼女に、懐かしさを覚えた往年のファンも多いのでは?
80年代に薬師丸ひろ子、原田知世と共に日本映画を席巻した渡辺は、3人娘の“次女”と表現されることが多い。もちろん年齢的な理由によるものだが、長女でも末っ子でもない中途半端な立ち位置は、容姿も名前も雰囲気もまとまり過ぎてインパクトに欠ける彼女にはピッタリである。異論はあるだろうが、恐らく3人の中では一番の美人で、逆に人気は3番手だった。楽天の野村監督流に言えば彼女も、ひまわりではなく月見草と言ったところか。
1982年、真田広之の相手役を選ぶ角川映画大型新人女優オーディションでグランプリを受賞して、17歳でデビューする(原田知世は特別賞だった)。その作品が「伊賀忍法帖」(特集「読んでから見るか、見てから読むか」を参照)で、姫君役を圧倒的な美しさで演じるなど一人三役の活躍。振り返ってみると、デビュー作で演じた時代劇のヒロインこそ、彼女のフィルモグラフィーの中でも最高のハマリ役だったのではないか? その後、彼女は出世作「積木くずし」を経て、赤川次郎原作による3本のアイドル映画に主演するわけだが、不良少女役も赤川的な溌剌とした現代っ子も、端正すぎる彼女の容姿にはそぐわなかった気がする。
とは言え、最初の主演作「晴れ、ときどき殺人」(84年)は、アイドル映画としては出色の出来栄えだ。監督が「パッチギ!」の井筒和幸で、赤川らしいユーモア・ミステリーの味わいがしっかりと再現されている。お屋敷を舞台にした“本格ミステリー”の枠組みを利用しながら、謎解きに主眼を置かず、大仰な設定を“軽さ”に転じさせる赤川作品ならではの特徴は、もともとアイドル映画と相性がいい。しかも井筒監督の微妙にデフォルメされた漫画チックな作風ともマッチして、3本の中では唯一、良い意味でのアイドル映画として成立していた。
2作目の「いつか誰かが殺される」(84年)も必見の1本。巨匠・崔洋一の若かりし日の仕事ぶりが堪能できるからだ。井筒にしろ崔にしろ、角川映画には先見の明があった。赤川次郎ならではの軽妙な物語を、生々しく地に足の着いた崔テイストに染め上げてしまう力技はさすがの一言。3作目の「結婚案内ミステリー」(85年)も、当時まだ無名だった渡辺謙との共演など見どころの尽きない映画だ。
最後に、彼女がヨコハマ映画祭の助演女優賞を受賞した「彼のオートバイ、彼女の島」(86年)を加えておきたい。竹内力扮する主人公にフラれたことを機に明るく変貌を遂げる女の子を好演。ヒロイン(原田貴和子)よりも美人なのに、いや美人だからこそ負けてしまう引き立て役がなんとも似合っていた。
圧倒的な美貌ゆえに、人気面で3番手に甘んじてしまった渡辺典子だが、“端正さ”というものは、時代が移っても色あせることはない。今、改めて観直してみると、往年のファンならずとも、彼女の美しさに目を奪われるはずだ。
文・外山真也
2009.2.13更新
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