
ホラー映画といえば、一昔前までは夏の風物詩だった。ところが、1997年の冬に「パラサイト・イヴ」が思わぬヒットを記録すると、翌98年の1月には“冬のホラー”と銘打って「リング」「らせん」が同時公開され、一躍、ホラー映画ブームが巻き起こる。寒い冬に、もっと背筋を凍らせたいホラー好きが顕在化したのだ。
これ以降、“冬のホラー”は定番となり、数々のヒット作・話題作を世に送り出していく。同時に、“ジャパニーズ・ホラー”なる言葉が生まれ、貞子の呪いが連鎖していくように、世界中に新しい恐怖を増殖させたのだった。
つまり、ハリウッドからアジア市場まで、数々のリメイク作やエピゴーネンを生んだジャパニーズ・ホラーは、角川映画が仕掛けた“冬のホラー”戦略の到達点だったわけだ。
そこで今週は、“冬のホラー”にスポットを当てて、5作品を紹介したい。
まずは、「リング2」と同時上映で公開された、直木賞作家・坂東眞砂子原作の「死国」(99年)。四国八十八ヶ所のお遍路を逆方向に巡る「逆打ち」という禁断の儀式によって、16歳で死んだ娘を蘇らせようとする母親の狂気を、幼なじみの三角関係を絡めて描いた伝奇ホラーだ。栗山千明のデビュー作としても知られる。
その翌年に「リング0~バースデイ~」と同時上映された「ISOLA 多重人格少女」(00年)は、人の心が読める超能力者の女性が、多重人格症の少女が宿す13番目の邪悪な人格に立ち向かうサイコ・ホラー。少女を演じる黒澤優は巨匠・黒澤明の孫で、振れ幅の大きい難役を好演するが、この直後にSOPHIAのボーカル・松岡充と結婚して早々に引退してしまったのが惜しまれる。原作は「黒い家」の貴志祐介。
「死国」と同じ坂東の伝奇小説を原田眞人が映画化した「狗神」(01年)もまた、四国を舞台に土俗的な差別や民間伝承が生む悲劇を官能的に描いた作品だ。老けメイクから次第に若返る天海祐希の妖しい魅力が冴える。「狗神」と同時上映で劇場公開された「弟切草」(01年)は、奥菜恵主演のお化け屋敷もの。亡き父の遺した洋館を訪れたヒロインを、得体のしれない恐怖が襲う。
そして最後は、「リング」の鈴木光司(原作)×中田秀夫(監督)による「仄暗い水の底から」(01年)。ハリウッドでリメイクもされた傑作で、離婚調停中の女性が幼い娘と移り住んだマンションで味わう恐怖体験を描く。黒木瞳が体現する母性が感動を呼ぶドラマ性も秀逸だ。 奇しくも5作品すべて女性が主人公。“恐怖”に立ち向かえる芯の強さは、女性だけが持ち合わせているということかもしれない。ホラー=夏のイメージを一変させ、世界的なジャパニーズ・ホラー現象を担った“冬のホラー”シリーズの底力を、この特集で確かめてほしい。
文・外山真也
2009.1.30更新
(C)1999「死国」製作委員会,(C)2000「ISOLA 多重人格少女」製作委員会,(C)2001「狗神」製作委員会 ,(C)2001「弟切草」製作委員会,(C)2002「仄暗い水の底から」製作委員会







